明るい青リンゴ色のヒスイに浅浮き彫りの彫刻が施されたマヤのペンダント。
頭飾りと円形の耳飾りとビーズのネックレスをつけた要人と思われる人の顔がかたどられています。ペンダントとして使用できるよう水平に穴が開けられています。
マヤ文明では、ヒスイはあらゆる石の中でも最も貴重な物質と考えられていました。耐久性とその美しい色を特徴とするヒスイは、生命力の源である水や植生、そして稲妻や雨を象徴していました。その象徴的な美しさは、あらゆる肖像や装飾品に超自然的な力を与えています。この淡緑色のお守りに施された彫刻は、まるでそれが自然の創造物としてずっとそこに存在していたように美しく石の表面を埋め尽くしています。視覚と触覚の両方に心地よさを与える小さな名品です。
「エメラルドグリーンのヒスイを表すQuentzalitztliは、ケツァールの羽を意味するQuetzalliと黒曜石を意味するitztliを語源とする言葉で、それが緑のケツァールの羽のように見えたことが命名の根拠とされている。羨望に価する高価で貴重なその石は、誰もが欲しがる大切に保管されるべき宝石である。」これは、スペイン人の年代記編者サアグンが、メソアメリカ旅行中に遭遇した新世界のヒスイと高度に発達した宝石細工術について記した16世紀の著書の一節です。コロンブス以前のマヤ人が持っていた金属では硬いヒスイに彫刻に施すことはできなかったため、この人面ペンダントに代表されるヒスイを土台とするマヤ文明の芸術作品は、硬い石、竹、より糸、砂、水などを使って作られていました。マヤの芸術家は、これらのわずかな用具のみを使ってヒスイの原石を切り出したり、削ったり、磨いたり、穴を開けたり、すり落したり、つやを出したりして、この見る者すべてを惹きつけてやまない洗練された芸術作品を生み出したのです。水平に穴が開けられており、恐らく神秘的な力を与えるお守りとして古代マヤ人が身に付けていた物と思われます。もともとの使用目的が何であれ、この誰をも魅了する時代を超えた芸術作品を作り出した芸術家に畏敬の念を抱かずにはいられないでしょう。