馬に乗る騎士を描いたブロンズ像。
乱れた長い髪と右手を高く差し伸べ恩恵を求める姿が印象的です。左手にはパテラ(献酒杯)と見られる物が握られています。緑の古つやが美しい、非常に珍しい作品です。
こうした作品の類型的起源はケルト期に遡ると考えられています。イギリスのケルト・ローマ文化が栄えた地域(ブレーントリーなど)からも同様の青銅器が出土しています。アウグストゥスからコンスタンティヌスに至るまでのローマ皇帝が乗馬する姿を描いた像が評判となり、もともとのケルト様式が復活した可能性も考えられます。西暦2世紀までには、ローマには約20体の青銅製騎士像が存在していましたが、その大半は失われてしまいました。中でも最も有名なのがマルクス・アウレリエス(西暦121~180年)を描いた一連の像で、西暦173~176 年の古代ローマで最初に展示されました。これらの像は、コンスタンティヌス1世を描いた像だと勘違いされたため、倒壊を免れたといわれています。トガに身を包んだ巻毛の皇帝が手を差し伸べている姿を描いたこのブロンズ像は、平和と権力を象徴しているといわれていますが、失墜したライバルが慈悲を求める姿を描いた作品であると主張する歴史学者もいます。皇帝は常に勝利を収める強大な支配者として描かれるべきですが、マルクス・アウレリエスは、自らが自負していたように、軍事的英雄というよりはむしろ平和をもたらす人物だったようです。