念入りに作られた頭飾りは、イヤリング、チークプレートと大きなディスク・ペンダントを身に付けた要人が足を組んで座っている様子をかたどった像。
頭飾りの横に長い形状は古代マヤにおいて位の高い人物のみが身に付けることを許された美しいケツァールの翠色の羽を表現した物と考えられます。
この像のモデルが身に着けている衣服、イヤリング及びネックレスのシンプルで美しい形状は、職人の技術の高さを物語っています。この像の類い希な芸術性と美しさはモデル自身の品格と穏やかさ、そして職人の表現力の両方が兼ね備わったことでもたらされたのです。
ユカタン半島の西海岸沖に位置する墓地遺跡の小島ハイナ島はマヤ人によって何トンもの土が積み上げられた際は、実際にメキシコ湾上に浮かんでいるように見えたとされています。このエリートのための墓地に要人を埋葬する際には、笛や楽器などを象った陶器を故人の手に持たせるのが一般的でした。初期に埋葬された小像は僅かで、その殆どはこの座像のような上質のものでした。 ハイナ島の墓地としての人気が高まるにつれ、こうした陶器は大量生産されるようになり、その結果、これらの陶器の芸術的価値は減少していきました。 ハイナ島から出土する陶器は、出産に関連する題材を扱っているものが多いのが特徴です。また、死者が再び現世に戻る過程で通るとされていた「あの世」を扱った作品も多く見られています。
- 参考資料 Mexique, Terre des dieux, Trésors de l'art Précolombien, Musée Rath,Genève,1998,№238〜241
ケツアール鳥