鹿の蹄を握っている人の腕がかたどられた美しい大理石象の一部。
モデルは恐らく狩りから戻って来たサテュロスか、もしくはバッカスがいつも身に着けている鹿の皮のチュニックの端を握っている様子を描いたものと推測されます。
鹿皮のチュニックはバッカス、ケレス、サトゥロス及びメナードの祭りの衣装や、儀式の際にこれらの神や精霊に扮するための衣装としても用いられていました。
粒子の細かい大理石が使用されていますが、背部の表面には再研磨加工が施されていません。
デザインのバランスは非の打ちどころがなく、鹿の足を掴む人差し指の造形など細部にまで施された細かな造作は、これが優れた彫刻家による作品であることを物語っています。