ギリシャ ルテリオンのかけら
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ギリシャ ルテリオンのかけら

文化様式 古代ギリシア
原産   シチリア島
年代   紀元前6世紀
素材   テラコッタ
大きさ  
価格   

「ルテリオン」と呼ばれる、ベージュ色の底浅の大きな陶器の一部。
レースの様子を描いたフリーズと呼ばれる浮き彫りの模様が、ローラー・スタンプにより施されています。ドリス式円柱により分けられたパネルには、勝利の女神ニケと馬車(クアドリガ)が交互に描かれています。ニケは、鎌状の翼と先が丸まった靴を身にまとい、右手には花冠、左手には鳥を持っています。別のパネルには、馬車を猛スピードで引っ張る馬と前かがみになった御者の姿が描かれています。馬の下にはシカが、馬の頭上には空を舞うワシが描かれています。 この作品に見られるニケと馬車とを交互に描く手法は、紀元前6世紀前半のコリント様式を起源としています。シチリア島では、セリヌスからアクラガスやヒメラに伝わったこの手法が、ヘレニズム文化の影響を受けた島民により島の中央部および東部へと広く伝えられていきました。
「ルテリオン」という言葉は、通常「高い脚をもつ洗面器」という意味で使われています。神殿の入り口や祭壇近くに置かれていたこれらの器は、宗教生活において重要な役割を果たしていました。ルテリオンをまねた陶器は、ギリシャ一帯の民家、公共建築物および神殿で見つかっています。そのうち、エピダウロスから出土したルテリオンの大半が医術の神アクスレピオスにささげられていました。一方、アテネのアクロポリスで出土したルテリオンの多くはアテナに、エレクテイオン周辺から出土したルテリオンはポセイドンにささげられていました。ギリシャの陶器やアッティカの赤絵式壺絵には、ルテリオンのさまざまな使用方法が示されています。陶器に残されたこれらの絵には、女性が手を洗う姿のほか裸の人物も描かれており、ルテリオンが浴室そのものとして使用されていたことが推測されます。祈りの前に手を洗うことをギリシャ人が重視していたことは、複数の文書に記されています。特に流水、海水よび天空神ゼウスによりもたらされると信じられていた雨は、身を清めるのに適した水と考えられていました。中でもアイスキュロスが「汚れを知らない水」と称した海水は、身を清めるのに最も適した水として扱われていました。そのため、清めの水に塩が加えられることもありました。

- 参考資料:Enamul Haque, Chandraketugarh : A Treasure House of Bengal Terracottas. Dhaka, The International Centre for Study of Bengal Art, 2001